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「ウォークスルー」導入による植栽管理の取組み

An Action of the Planting Management by Walk Through

平成21年2月 造園技術報告集 Vol.72, No.5

山野 秀規*,山本 紀久*,趙 賢 一*,大塚 生美*

Hideki YAMANO*, Norihisa YAMAMOTO*, Ken-ichi CHO*, Ikumi OHTSUKA*

概要

設計・施工・管理の担当は、一般的にそれぞれの専門家に分かれるため、設計意図の管理作業者への伝達は、設計図書や竣工図を通じて行われることになる。一方、言うまでもなく植物は生き物であるため、設計意図の実現には、植栽後の植栽管理による誘導が重要となる。植栽工事を基礎工事とすれば、その後に続く管理作業は仕上げの工程と言える。しかし、設計図書では、個体差のある植物個々の成長を予測し、時間軸を表記するのは極めて困難である。このため筆者らは、設計図書と合わせて、新たな「植栽管理システム」を構築することが必要ではないかと考えている。
本稿は、そうした問題解決のための一手法として、事業者・設計者・施工者・管理作業者等それぞれの段階の参加主体が設計意図を共有し、植物の経年変化に合わせた管理を実践・継続すべく取り組んだウォークスルー導入による植栽管理の事例を報告する。
筆者らが植栽管理の家庭で導入したウォークスルーは、そもそも専属の植物管理専門技術者が定期的に管理責任者やガーデナーと一緒に現場を確認しながら見て回ることである。ランドスケープを重視する米国のディズニーランドでは、ウォークスルーが年間管理計画の柱となっており、筆者らが設計・監理に参画した東京ディズニーランドでも実践されている。
ところで、先に「新たな植栽管理システム」とした理由は、我が国では、まだ、植栽管理専門技術者が一般には普及していないものの、植物の動態的・生態的管理には高度な植物知識と植物を健康に生育させる技術とが必要とされることから、システム構築の目標を植物管理専門技術者が一般的な役割として確立することに置いている点にある。
こうした背景には、近年、植栽設計委託には、CSR活動の一環に位置づく森林造成、郷土種の移植・増殖による郷土警官の創出、岩礁地や都市域等植物生育が厳しい地域での植生回復等、多様かつ専門的な要請が一層高まりつつあり、刈り取りや選定を中心とする設計図書では対応し得ない場面が多くなりつつあることにある。
なお、本報告のウォークスルーでは、事業者・設計者・管理作業者(本事例では施工・管理受託者)の3者協働で取り組んだ。それぞれの役割は、設計者は、先に述べた植物管理専門技術者を代替し、事業者は、植物の成長で変化する景観を管理で抑制するなどの意味を理解し、予算配分等各種変更の迅速な判断を、施工者は詳細な現地情報提供者としての役割を担った。また、2つの事例とも民間委託事業で、事業主の理解の下、設計段階において予算化・実施された事例である。

 

「ウォークスルー」導入による植栽管理の取組み」をダウンロード

report_09_walkthrough.pdf(531.3KB)

* 株式会社 愛植物設計事務所, *Ai-shokubutsu Landscape Planning Office Co., Ltd.