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アサヒビール茨城工場造園設計・監理

★造園学会造園作品選集1996掲載

熾烈な販売合戦を繰り広げるビール業界にあって、「工場見学」による宣伝は重要な意味を持つ。このプロジェクトは、案内施設と工場見学ルートに関わる景観を、土地の環境とポテンシャルを読み解きながら、おいしいビールを育む自然の恵みである「太陽・水・みどり」を主題として構築したものである。

所在地: 茨城県守谷市緑 事業主体: アサヒビール株式会社 規模: 9.0ha 設計期間: 1990年5月~1991年10月 施工期間:1991年11月~1992年4月

工場前庭 「太陽・水・みどり」という主題を、広い水面・モミジバフウの紅葉・青い空によって表現する。

 

<コンセプト>
計画前の敷地内には、斜面地とため池があり、かつてはヘイケボタルが棲んでいた。計画当初はごみ溜まりとなっていたこの池と、既存斜面樹林を取り込みながら再生し、建築周りの庭園ではなく、<もともとそこにあった風景に建築された>ような風景を目指した。
このコンセプトを、おいしいビールを育む「太陽」、「水」、「みどり」というテーマに重ね合わせ、湿地性の明るい疎林、ホタル池、既存の斜面林、などを主要な要素として構成した。

「太陽」
広い水面と、秋に鮮やかに紅葉するモミジバフウを主体とした明るい疎林によって、太陽のきらめきと木漏れ日の美しさを強調する。

「水」
清水を演出するために、瀬やよどみなどの変化をつけた広い河原をつくり、流水と礫による水質浄化の効果を高め、流水性のオイカワやウグイを移入した。
水辺にはミソハギやサギキョウ等の湿性植物群をつくり、四季の変化と水辺の生物の生息拠点とした。
また、敷地東端の、かつてヘイケボタルの棲んでいた既存樹林に囲まれた溜池は、そのまま取り込んで河原とつなぎ、止水性のフナ、モツゴ、タイリクバラタナゴなどを移入した。

「みどり」
既存の斜面林を取り込みながら、外周緑地には地域の自然林と二次林の構成種の幼木を混植して、水源涵養のみどりを想定した樹林帯を創出した。また、歴史を伝える既存の大樹を背景として、池の周囲は疎林を配し、池と樹林を一体的につないだ。

 

池を見せるようにつくられた見学者応接室

全体平面図

ごみ溜まりとなっていた樹林に囲まれた池

池を斜面ごと取り込んで河原とつなぎ「ホタル池」として再生する