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志木ガーデンヒルズ外構実施設計・監理

武蔵野の野火止台地を縁取る既存の斜面林0.2haを含む約1.4haの敷地に、4棟構成、337世帯の住むマンションを建設するプロジェクトである。コナラ、イヌシデ主体の斜面林は、「野火止用水」の跡地を含み、タヌキや野鳥、多くの昆虫類が生息するみどりとして、地元の住民や志木市からもその保全が強く望まれた。

所在地: 埼玉県志木市本町4丁目 事業主体: 三井不動産、三菱地所 開発面積: 14,800m2 緑地面積: 約4,200m2(既存緑地約2,000m2) 着工年: 2003年~2005年

整備前樹林図(左)と計画平面図(右) 敷地内には斜面林とともに巨大なイチョウがあり、移植して残すこととした。

 

コンセプト

事業用地の斜面林や既存樹木の保全は、事業者の考える「自然と共生する住宅地」という方針と一致し、当初から、住民、志木市、事業者の三者協議が重ねられ、当社がその調整役としてワークショップに関わった。そこから設計提案コンセプトを、「自然と共生する生活空間の創出と地域への発信」とし、以下の事項に配慮した。

 

次世代へ遺贈する杜の保全・育成

  1. 既存樹大銀杏の移植
    敷地内には、昭和24年頃、気象観測の場所に生徒の立ち入りを防止するための柵として挿した6本の枝が育った大銀杏があり、周りから十分な陽を受け風格ある樹形を保っている。外部からも望める巨大な銀杏は地域の人々からの保存運動が起こるほどに愛着を持たれていることから、歴史を伝える敷地内のシンボルツリーとして受け継ぐために大規模な移植が行われた。
  2. 既存斜面林の保全
    斜面緑地は将来に引き継ぐ郷土の緑として、出来る限り減少・分割することなく残す土地利用とした。コナラやシデを主体とした大樹が広範に広がり、景観的にも、また野生生物の生息環境としても存在価値が高い斜面緑地は、下草刈りや落葉かき、衰弱木の除去等適正な管理の元、より多様な二次林の植生を維持してゆく。
  3. 市民や市が一体となった管理・育成
    敷地の一部を提供公園として外部へ開放し、マンション居住者や近隣住民、志木市が一体となって管理、育成が行われている。

豊かな緑と多彩な花によって繊細に表現された四季のある生活

  1. メインガーデン
    メインガーデンは既存樹林を取り込んだ緑陰テラス、芝生広場、花園が組み合わさった、子供からお年寄りまでが四季を通して楽しめる出会いの場とした。
  2. 遊具広場
    遊具は斜面林に抱き込まれる形で配置し、既存の樹木と一体的に溶け込んだシンプルな木製遊具と砂場とした。
  3. 敷地外周
    敷地外周は、緑や花の修景を行い、囲いを感じさせないしつらえとする。

伐採木の利用

  1. ベンチやファニチャーとしての再利用
    伐採を余儀なくされたコナラ、エノキ、ムクノキの大樹の材は、ベンチやファニチャーとして再利用し、木製遊具や砂場の周りや提供公園部に配置した。
  2. バイオネスト
    伐採木の丸太を斜面林の中で60cmほどの高さ程度に同心円状に組み、斜面林管理の際に発生する落ち葉や伐採木をその中で積み上げることにより、昆虫などの棲みかとなり子供達の格好の遊び場となる。そればかりか、斜面林管理時に発生する下刈残滓の「集積と搬出」「運搬廃棄」の手間を省き、林床をすっきりとさせ人の立ち入りも可能にし、多彩な林床の植物をよみがえらせることが可能になる。これをバイオネストと呼び、当プロジェクトでは、近隣住民と一緒になってこれをつくりあげた。

 

銀杏の歴史

銀杏の移植

斜面林管理とその時間変化

広場全体

ムクノキの伐採木でつくったファニチャー

斜面林の中のバイトネスト

近隣住民とバイオネストをつくる