柏の宮公園は、4.3haの企業厚生施設の跡地を、区民の声を反映したワークショップ方式で計画・整備した杉並区で最大規模となる区立公園である。設計での留意点は、「生き物と共生する公園づくり」と「ゼロエミッション」で、雑木林の保全・復元、崖線地形の保全、企業グラウンド跡を活用した広場、テニスコートの再整備、既存プールを活用したビオトープや田んぼの整備などを行った。
所在地: 東京都杉並区浜田山 事業主体: 東京都杉並区 規模: 4.3ha 設計期間: 2000.6~2002.3 施工期間: 2002.10~2004.9
バッタ等が生育する草地広場
神田川へ続く崖線にはシデ・アカマツを主体とした雑木林が残り、台地上は15面のテニスコートや野球場、プールで構成されていた。
ワークショップは、区民に参加者を公募して、現地確認から計画案の作成、管理運営までを検討した。ワークショップの初めは、豊かな自然環境の保全、オープンスペースの確保、防災公園としての整備、周辺環境への配慮等の区の公園整備の考え方を提示した。5回の区民ワークショップと、区在住の有識者が参加する専門委員会を通して、区民の考えたグループ案の調整を図った。
杉並区ではまとまった樹林などの自然地が失われているため、ここでは区内で貴重な崖線樹林を保全し、生き物と共生する公園づくりをすることが重要であった。これを実現するために、林床草本類の生育する雑木林の保全と復元、雑木林に囲まれたバッタ等が生育する高茎草本のある草地広場を配置した。また、既存プールを活用した水辺の生物の生育する池に改修、崖線下部のテニスコートを撤去し、かつて川沿いの低地に見られた水辺環境として水田を復元した。
既存の資源を最大限に活用し、ゴミを外に出さない「ゼロエミッション」を実現するために、基本原則である3R(REDUCE, REUSE, RECYCLE)を徹底した。
REDUCEとして、既存樹林・樹木の保全と既存地形を尊重した造成工事を軽減する土地利用を行い、REUSEとして、既存樹の移植、スミレ等が生育するグラウンドの芝生の移植を行った。RECYCLEとしては、解体したコンクリートを利用した蛇籠や池の護岸への再利用を行うことによって区域外への廃棄物軽減に努力した。
開園後は、ワークショップに参加した区民グループによる草地の外来種除去、水生生物の保護と育成、田んぼの米づくり、プレイパークの指導等様々な公園管理のボランティア活動が進められている。
樹高15mを超える崖線上の既存の雑木林
雑木林復元のために新植されたクヌギ
既存のプールを活用して水生生物の池に改修
テニスコートを撤去してかつての低地に見られた水辺環境である水田を復元
ボランティアグループによる外来種除草