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六本木ヒルズC街区屋上庭園実施設計・監理

さまざまな緑を有する六本木ヒルズにおいて、レジデンス屋上庭園は、立体的に展開するパブリック/プライベートなガーデンとして計画された。弊社は英国ガーデンデザイナーであるDan Pearson氏との協働のもと、けやき坂通りに沿って、屋上や人工地盤上に展開する14のエリアを、地上の緑と連携してゆく屋上庭園として実施設計・設計監理を行った。

所在地: 港区六本木六丁目 発注者: 六本木六丁目地区市街地再開発組合・森ビル㈱ デザイン監修: CONRAN & PARTNERS + DAN PEARSON 実施設計・設計監理: 愛植物設計事務所

 

直線的な建物と対比する曲線(リボン)で構成された様々な高さのレジデンス屋上庭園

デザイン方針の決定

事業者からのデザイン依頼に対し、ダン・ピアソン氏は下記のデザイン方針を決定した。

  1. ハイブリッドガーデン
    英国の自然や田園の風景等からデザインエレメントを取り入れ日本の自然と組み合わせた「日英のハイブリッドガーデン」
  2. リボンでつながるガーデン
    各建物の屋上や人工地盤に点在するガーデンを、水の流れやイヌツゲの生垣、空石積みの曲線が、リボンとして全体をつなげる
  3. 草本類の四季の変化を見せる
    直線的な建物や、厳密な形状で仕上げられたイヌツゲの生垣と対比するように、足元の植栽は柔らかく野性的な種類、特に宿根草や多年草、グラス類など、成長や衰退、季節の変化、風のそよぎなどを景色として感じられる植物の多用

デザイン方針の具現化

ダン・ピアソン氏のデザイン方針に対し、弊社では以下の視点に基づき植栽種導入検討を行った。

  1. 日英の気候の差
    気候・湿度・降雨量の他、台風の襲来や時として訪れる大雪、また都市化とヒートアイランド化が進む東京の特徴として、夜間も30℃以上の日が続くなど、英国とは異なるこれらの気候に対し、健全に生育する植物材料であることが必要であった。
  2. 屋上緑化であること
    超高層ビルが立ち並ぶ街中での屋上緑化における留意点として、ビルの日影、強風、強い日照、乾燥しやすい比重の軽い土壌が挙げられる。これらの環境圧に対し一定程度の耐性を持った植物種導入の検討を行った。
  3. 材料の市場性
    イメージの植物材料の日本における供給、生産量等、材料調達が可能な市場性を持ったものかどうかの検討を行った。

ガーデンの熟成へ向けて

ガーデンの熟成には、状況に応じたきめ細やかなメンテナンスが不可欠である。「事業者・設計者・管理作業者」の3者による協働巡回(ウォークスルー)とそれに基づいた管理マニュアルの更新を盛り込んだ、六本木ヒルズレジデンス屋上庭園オリジナルの管理体制を構築した。

○ガーデンカルテ
ウォークスルーでは、設計意図の伝達だけでなく、日常管理での課題、管理コスト等の多岐にわたる問題を、事業者・設計者・管理作業者で協議しながら最適解を模索した。その結果はその後の管理において貴重な資料となるほか、異なる役割の3者が管理の目標を共有し、各々の担当を明確にする上で非常に重要であることから「ガーデンカルテ」として記録し、共有した。

AREA-1 ラウシャムハウス&ガーデンズの蛇行疎水を模した流れとハナズオウ

AREA-1 厳密に刈り込まれたイヌツゲの円形刈込

AREA-6 風にそよぐファウンテングラスとガーデンのポイントとなる穴の開いた壁線

AREA11 中世の薬草園を模して配されたフラワーベッドとイヌツゲ刈込

AREA13 中世の物見台を模してガーデンのアクセントとして配されたグラスマウンドには、最新の緑化技術を用いて基盤がつくられている

AREA13 風にそよぐタカノハススキ。背景の都市景観との対比が美しい

事業者・設計者・管理作業者の3者によるウォークスルーの様子